7artisans 35mm F1.2雑感

レンズ雑感、第3弾。

  • レンズ:7artisans (七工匠) 35mm F1.2 (X-Mount)
  • 評価:81点

幸か不幸か、今どきの中華レンズはいい。というか今どきの大きくて重い日本レンズどもには悲しみさえ覚える。今思えば私がPentaxを見限ったのは、D FA★50mm F1.4が出た頃だ。

この35mm F1.2はそんな多くの日本レンズにはない美点を持っている。それは撮影が楽しい、持ち出したくなる、というもっとも重要な性能だ。

四隅はぜんぜん解像しないし光量も落ちるし、像面湾曲も、コマ収差も、球面収差によるフォーカスシフトもがっつりある。極端ではないが、標準レンズにしては歪曲収差もある。もちろんAFもないし、防塵防滴でもない。犠牲にしたものは多い。

そして得たものは、圧倒的な小型・軽量・安価に対して、異様なまでの明るさ(F値)である。もちろん弱点は多いので、万能に使えるものではない。だが、考えてみれば万能に使えるレンズなど、もとよりこの世に存在しなかった。

レンズ構成はSonnar型。一眼レフ時代では標準域の主流はSonnarからダブルガウスへと移ったが、ミラーレスになってまたこのようなSonnarのコンパクト大口径が増えてくるといいなぁ。PlanarやSummicronなどのダブルガウスも大好きだけどね。Otusなどの標準レトロフォーカスは豚の餌。

なお絞りのクリックはないが、ミラーレスでは写る絵が見えているので、絞りの数値を意識する必要性はない。軽く絞ると目に見えて絵が変わるし、絞りもかなり円形を保つ。これがとにかく素晴らしい。口径食もF1.8くらいで収まる。

弱点が多いならば、撮影者はレンズの長所をより多く引き出してやることに注力することになる。逆に言うと収差のコントロールにおける引き出しが多いレンズだ。これは趣味としての写真の一種の醍醐味だと思う。

ちなみに、意外なことに逆光にはさほど弱くない。コマ収差も大口径にありがちなサジタルコマ収差ではないので、許せる。

撮っていて楽しいのと、軽くて小さいので、旅行にもよく持っていく。これが1kgのレンズなら、台湾や仙台に持っていくことはなかった。

日本でこういう路線で期待できるのは、コシナくらいかなぁ。Otusは除く。

Sonnarじゃなくてガウスだけど、最近α7C用にNokton Classic 35mm F1.4を買ったので、これで撮影を楽しみたい。

・・・35mmの話しかしないな、こいつ。