②と③は元々1つの記事だったが、2つに分けた。
①被写体、構図、技法、状況
②イメージセンサーサイズ(本記事)
③諧調
1. センサーの解像度
センサーの画素数は基本的にどうでもいい。600万画素もあれば十分。α-7Dや20D, D70, *ist DSの時代でOK。ただし、センサーのダイナミックレンジは重要、ノイズも少ない方が自由度が高いので、ある程度は新しいセンサーの方が有利だ。
解像度が高いがゆえに、惹きつけられる写真・・・って見たことあるだろうか? よく写っているねー、で終わる。宇宙望遠鏡とかなら話は別かもしれないが、そこに深淵はない。等倍切り出し比較マニアは滅ぶがよい。
もちろん解像度や画質が低すぎるがゆえに、残念な写真はあるので、一定以上の画質は欲しい。
2. イメージセンサーサイズ
フルサイズミラーレスとフルサイズ一眼レフを所有しながら、APS-Cミラーレスをメインに使っている私だから、イメージセンサーサイズは写真の良し悪しに直結しないと確信している。が、イメージセンサーサイズについて、もやもやしているところをはっきりさせたい。
・画角の換算
焦点距離FL [mm]とイメージセンサーサイズ(対角長L [mm])が決まれば、画角は一意に決まる。
対角画角
イメージセンサーの対角長の比を掛けてやればいいので、APS-C(簡単のため24x16mmとする。実際にはもう少し小さいことが多い)だと焦点距離を1.5倍、フォーサーズ(簡単のため18x12mmとする)だと2倍すると、35mmフルサイズ(36x24mm)相当の画角となる。これはメーカーのサイトでも35mm換算が書かれているので、おなじみだろう。
・被写界深度(F値)の換算
画角は簡単にAPS-Cから35mmフルサイズ相当に換算することができるが、被写界深度、つまりF値はどうか。許容錯乱円、センサーサイズ、被写体との距離、F値、焦点距離が決まれば、被写界深度が決まる。注意点は、許容錯乱円もセンサーサイズによって変化すること。
ここで、
:許容錯乱円 [mm]
:センサーサイズ(対角長) [mm]
:被写体との距離 [mm]
:F値
:焦点距離 [mm]
:被写界深度 [mm]
(紛らわしいがFLはF*Lではなく、DFもD*Fではないので注意)
下図の横軸は35mm換算焦点距離、F値および被写体との距離ごとにグラフを描いた。APS-CのF2は35mmフルサイズのF2よりも1段ちょっと被写界深度が深くなっていることが分かる。またAPS-CのF1.33はフルサイズのF2と同等の被写界深度となっていることが分かる。つまり(焦点距離を35mm相当に換算したうえで)、F値も焦点距離と同じくAPS-Cなら1.5倍、フォーサーズなら2倍すればいい。
よってAPS-Cカメラに35mm F1.4を付けた場合、35mmフルサイズの52.5mm F2.1くらいに相当すると言える。APS-Cでフルサイズの50mm F1.4相当が欲しければ、33.3mm F0.93くらいのレンズが必要となる。
もちろん、F値が変わるのでシャッタースピード and/or ISO感度は同じにはならない。
・本当に換算できているのか?
まことしやかに言われる説で、画角は同じでもレンズの実焦点距離が違うから、フォーサーズの25mmとフルサイズの50mmのパースペクティブ(奥行き感)は別物である、50mm相当にトリミングしようが25mmという広角レンズの特性は消えない、というのは本当か? ・・・これは嘘である。
一応、3DCGで検証してみた。FL=25mmでレンダリングした画像(左上①)の中央を切り出したもの(左下①’)と、FL=50mmでレンダリングした画像(右上②)について、その差の絶対値|①’-②|を右下に表示したが、差がないため真っ黒になった。なお、この例では被写界深度は無限大である。
フォーサーズの25mmF1.4で撮った写真と、フルサイズの50mmF2.8で撮った写真は原理的に同じものとなる。収差とか周辺光量とか、各レンズ固有の要素は無視している。
・大きなセンサーのメリット
同じ画角、同じF値のレンズなら、センサーが大きい方が大きくボケる。だが前述のとおり、センサーサイズが違うなら、画角、被写界深度が同じになるような焦点距離、F値のレンズを使えばいい。
その場合、レンズのサイズはどうなるか? センサーサイズとは無関係に、F値=焦点距離÷有効口径である。フォーサーズの25mm F1.4の有効口径は約18mm、同じ画角と被写界深度を持つフルサイズの50mm F2.8の有効口径は約18mm・・・同じである。レンズの径は、有効口径+αが必要だとすると、雑に言えばレンズサイズは両者で変わらない。
ただし、フルサイズの50mm F1.4相当となると、フォーサーズでは25mm F0.7というスペックが必要となるが、こんなスペックはカメラ用レンズではあまり聞いたことがない。収差などの性能設計上の問題か、精度や硝材などの製造上の問題か知らないが、ないものは仕方ない。という意味で、フルサイズの方が被写界深度を浅くできるという自由度がある。
つまり、APS-CのF値の現実的な限界がF1.2程度であるとすると、フルサイズを使うのであれば、F1.8未満のF値のレンズを使わなければ、APS-Cに対してメリットはない。
逆に同じ被写界深度が欲しいのであれば、APS-Cの方がF値が小さくて済むので、ISO感度を上げなくて済む。
同じ画素数で、センサーサイズが大きい場合、画素ピッチが大きくなるというメリットはある。ダイナミックレンジや高感度ノイズに対して有利になる。
あともう一つは、フルサイズ用に作られたレンズ(オールドレンズなど)の性能、味を引き出すにはフルサイズを使わなければいけない。私がα7Cを買った理由である。
3. ボケ味
イメージセンサーサイズが大きいと、ボケも大きくとれる。だが、ボケはその量だけでなく、ボケ味こそが重要である。
一部の趣味カメラマンはレンズ特有のボケ味が大好きである。スペック表を見ても、MTF線図を見ても、ボケ味は分からないので、公式サイトや紹介記事の作例を見てこれを見極めようとする。数値に表れない性能というと、一種のロマンがある気がする。ぐるぐるボケ、二線ボケ、玉ボケ、円形絞り、口径食、APD、収差、DC-Nikkor、いろんなキーワードが思い浮かぶ。
しかし良い写真というのは、主題と構図が良ければ、ちょっとやそっとボケが汚かろうが気にならないものだ。やはりボケは脇役であり、主役にはなりえない。ボケの質が良かろうが悪かろうが、そこに目が行くような写真は、すでに負けているのだ。
ボケ味には確かに深淵があるけれど、そこは本質ではない。ボケとか収差とかもいずれ考えたいが、今日じゃない。いつか。(→やっと書いた)
ボケは脇役だとして、では主役をどう見せれば魅力的な写真となるのか?
ということで、③へ続く。