マウントアダプターの精度

 一般に、マウントアダプターは0.01mmレベルの精度は出ていないが、しかしアダプターの厚さ(フランジバックを調整する量)が厚い側にばらつくと無限遠が出なくなるため、わざとわずかに薄めに作られている。

実験方法

 マウントアダプターを付けると本来のフランジバックよりもちょっとだけ短くなるので、レンズの距離指標よりも少し遠くに合焦することとなる。この度合いを計測することで、各アダプターの精度を推定してみた。

  1. レンズの距離指標をある値に合わせる
  2. その状態でカメラを前後させてピントが合う位置を探す
  3. その位置での被写体との距離を計測
  4. 焦点距離と距離指標の値から、その時のレンズ繰り出し量を計算
  5. そこから何mm引けば、実際に計測したフォーカス距離と一致するかを計算

 MマウントレンズをEマウントカメラに付けるアダプターは以下の4種。

  • VoigtlanderのVM-E Close Focus IIの無限遠ロック状態
  • SHOTEN LM-SE Macro (L)のヘリコイド最短状態
  • K&F Conceptの固定型
  • LM-EA9のAF非作動状態

 ピントが分かりやすいようにNOKTON 35mm F1.2 IIIを使って計測した。これは全群繰り出しなので、問題ないはず・・・?


実験結果

 図中の●は実測データ、細い実線は理論式(フランジバック誤差は実測値からパラメータ同定)である。太い赤線はフランジバック誤差ゼロの状態。

 この計測値には、レンズの距離指標を合わせる誤差、カメラを前後させてピントを合わせる誤差、その時の距離をメジャーで計測する誤差などが含まれるため、まぁ全体的に精度は低いものだと思う。長距離域では5cmくらいは平気でずれるだろう。ピントの山を、カメラ本体を前後させて探すのは至難の業である。

 余談だが、三脚の足に靴下を履かせて、フローリング上で滑らせてピントを合わせるという技を編み出した。なんの役にも立たない。

 本来のMマウントのフランジバックに対して、各アダプターは以下の表のように0.08~0.21mm程度短いと推定された。Voigtlanderはほかのヘリコイド付きやAFのアダプターよりは精度がいいが、完ぺきには程遠い。SHOTENはぴしっと止まらないので、まぁこんなものだろうなぁ。Rayqualとかを買えば、もっと精度は高いのだろう。

Voigtlander VM-E IISHOTEN
LM-SE (L)
K&F ConceptTECHART LM-EA9
推定誤差-0.11mm-0.18mm-0.08mm-0.21mm

 ヘリコイド付きのものは、そこから4.3mmなり5mmなり伸び出すので、ごくごくわずかにヘリコイドを伸ばしておけば、距離指標と実際のフォーカス距離を一致させることはできるが、そこで止めておくのは至難。マーカーで目印を付けるくらいが関の山だ。


フランジバックの誤差と被写界深度

 フランジバックの誤差は0.1mmであり、レンズ焦点距離は28mm、被写体までの距離は既知(=目測は完璧!)であるという条件下で検討。レンズの距離指標を被写体までの距離に合わせた場合、実際には被写体よりも向こうにフォーカスが合うため、被写体が前方被写界深度内に入るようなF値を求めた。

 F5.6まで絞っても被写体は前方被写界深度内に来ない。F8であれば前方被写界深度内に入る。なお、許容錯乱円の径は0.015mm(センサーサイズはFF)とする。

FL [mm]:レンズの焦点距離
x [mm] : レンズのヘリコイド繰り出し量
e [mm]:マウントアダプターのヘリコイド繰り出し量(今回は負の値)
{b_0 =  FL + x}
{1 / FL =  1 / a_0 + 1 / b_0}からaを計算
被写体との距離 [mm]:{d_0 = a_0 + b_0}
{b_1 =  FL + x + e}
{1 / FL =  1 / a_1 + 1 / b_1}から{a_1}を計算
フォーカスが合う位置 [mm]:{d_1 = a_1 +b_1}
フォーカス誤差 [mm]:{d_1 - d_0}

c [mm]:FFでの許容錯乱円径 = 0.00035 * 43.26662
F : F値
{z =  c * F * d_1}
前方被写界深度{DOF_f =  d_1 * z /(FL^2 + z)}


結論

 マウントアダプターを介したレンズで、レンズの距離指標頼りの目測撮影はお勧めできない。どうしてもやるなら、広角28mmくらいであってもかなり絞る必要がある。ちゃんとEVFを覗いて撮影したほうがいい。


 写真はα7C + Color-Skopar 28/2.8によるもの。特に意味はない。


余談

 無限遠に関しては、フォーカスリングを無限遠側に回し切ると、そのマウント専用のレンズでも無限遠を超えてしまう(オーバーインフ)レンズも多い。AFレンズやズームレンズはだいたいそうだが、MF単焦点はちゃんと無限遠で止まるものが多い。

 が、Eマウント版のAPO-Lanthar 50/2がオーバーインフに設計されていたのは、ちょっとだけ幻滅。Sonyのカメラ側のマウントにばらつきが大きいから、それを吸収するため、とかだろうか? プラマウントとかあるしなぁ。