Ai Nikkor 50mm F1.8

 Ai-S Nikkor 50mm F1.8はパンケーキ風だけど、非SのAiの方はちょっと分厚いのか。

 日本向けはAiもAi-Sも最短0.45mで一緒。Ai-Sの輸出仕様は0.6mもあるようだ。PENTAX-M 40mm F2.8は0.6mだから、Ai-S国内版はそれよりF値が1.3段明るくて、0.45mまで寄れて、優秀なんだな。

 調べてみると、Ai Nikkor 50mm F1.8は1978年からたった2年しか売られていなかったようだ。1980年にAi-Sにモデルチェンジし、1986年に光学系はそのままでAF化された。Ai-Sと比べると玉数が少ないからか、情報も少ない。Ai-Sよりも歪曲はちょっと大きいけど、周辺画質はいいとか、個体差か有意差か知らないが、多少は情報が見つかる。ボケはまぁ、どちらもオールドニッコールって感じ。別にいい。


 一応Ai-Sを探していたが、カビ・クモリのない良品の相場は1.2~1.5万円くらいのようだ。薄クモリくらいなら・・・と思ったけど、それでも1万円前後。今更このレンズにその値段はないなぁと思っていたところ、安くて外観は綺麗なジャンクの非Sに目が留まった。買った。

 前にも思ったけど、このレンズに限らず非SとAi-Sってずいぶん値段が違うんだな。今時、機能的には変わらないのに。

見た目、サイズ感はかなりいい感じ

 一応、分解清掃した。光学系は悪くないけど、ヘリコイドのフィールがいまいちなので、グリスを入れ替えた。一応光学系も洗浄したが、薄クモリは貼り合わせの内側かよ。これも一種のバルサム切れなのか? まぁ、写りへの影響はあまりないだろう。絞りのクリックが硬いので、バネを取っ払ってやろうかと思ったが、思いとどまった。

 ヘリコイドは全バラしちゃったので組み直すのが地味に面倒くさかった。光学系や絞りを清掃するだけならとても簡単。ヘリコイドの清掃は面倒。なお絞りはバラしていない。

絞り、前群、後群

 レンズ構成のタイプ自体は、5群6枚のダブルガウスでAi-Sと同じだ。光学設計自体は違うが。

左から(後群)6枚目、4&5枚目貼り合わせ、(前群)3,2,1枚目

 α7CRに付けて絞り開放で試し撮りしたところ、意外と解像感は高く、ボケも全然汚くない。色収差も結構少なくて、周辺画質も多少滲むが芯はあり全然流れない。かなり素直で綺麗な描写だ。ゼロとは思わないが、歪曲も相当少ないレベル。遠景ならもっと少ないのかも?

開放での後ボケの口径食もかなり少ない
α7CR + Ai Nikkor 50/1.8で撮影

 逆光には弱くてフレアでシャドウが浮くが、これは薄クモリのせいなのか、元々そんなものかは分からない。でも言うほど曇っていないから、元々な気はする。レフ板要らずだ。

フジツボフードは見た目がいまいち

 上のFE2の写真はα7CR + Sigma 35/2での撮影だが、これはフードが見えるようにわざとレフ板代わりのコピー用紙でシャドウを浮かせている。フレアではない。一番上の写真はレフ無しなので、黒がもっと締まっている。

 APO-LANTHAR用に買ったフジツボフードを付けてみたが、さすがにかっこ悪いのでやめた。一応、蹴られはしないようだ。フィルムカメラなので、フレアっぽいのもまた味、ということでいいや。この時代がどうかは知らないが、標準レンズにはフードを付けないのが長年のトレンドだった。

 唯一の不満は、絞りリングの操作フィールだ。硬くてガチャガチャで質感が悪い。バネ板の曲げを試行錯誤してみようかなぁ。

 ということで、私のフィルムカメラ用レンズは50mm F1.8になった。ここ数日はちょっと涼しいし、フィルムで撮りたくなってきた。


どうでもいい話

 なぜかニッコール千夜一夜物語では、Ai Nikkor 50mm F2でもAi-S Nikkor 50mm F1.8でも、このAi Nikkor 50mm F1.8のことはスルーされている。


第二夜 AI Nikkor 50mm F2

 以下に引用する。直接の後継はAi 50mm F1.8であるとしつつも、そのさらに後継のAi-S 50mm F1.8としか比較していない。

このレンズの発売の翌年の昭和53(1978)年に、開放F値を少し明るくした「AI Nikkor 50mm F1.8」を発売したことにより、「AI Nikkor 50mm F2」は普及価格の標準レンズとしての役目を終え、昭和54(1979)年1月に生産を終了した。ちなみに、「Nikon EM」の日本国内発売に合わせてレンズを薄型化した「AI Nikkor 50mm F1.8S」を発売したのは、さらにその翌年の昭和55(1980)年のことである。

ただし、このレンズの後継機種の「AI Nikkor 50mm F1.8」をさらに改良した「AI Nikkor 50mm F1.8S」に比べると、球面収差が若干大きく、そのため開放絞りでの像コントラストはやや低めである。しかしこれはこのレンズの特徴の一つであって、一概に欠点とは言えないだろう。というのも、このレンズは球面収差と周辺のコマフレアの残存量のバランスが絶妙なため、優れた像面の平坦性とあいまって、開放絞りから全画面均こと画面の均質性においては、優れたレンズの多い標準レンズの中でもトップクラスといってよいと思う。

このように、欠点が少なく、最新設計のレンズと比べても見劣りしない良好な性能を持つレンズである。強いて欠点を挙げるとすれば、わずかにタル型の歪曲(ディストーション)があることであろうか。もちろん普通に撮っている分には全く気にならない量であるが、建物の撮影や複写などの用途では少し気になることがあるかもしれない。ひとつ前のモデルである「Nikkor-S Auto 50mm F2」と、前述した「AI Nikkor 50mm F1.8S」では、ディストーションがほぼゼロと言えるほど良好に補正されていることと比較すると、少し残念なところではある。


第六十夜 AI Nikkor 50mm F1.8S

小型で安価ということではNikkor AUTOの時代から生産されてきた50mm F2が思い浮かぶが、当時普及型の50mmレンズの主流はF1.8だったので、競争力のないF2のレンズの外観チェンジという選択肢はなかった。しかも目標とされたレンズの全長は50mm F2より小さかったのである。

中村さんは、そうした従来からのレンズタイプの見立てを無視して、絞り間隔を狭め、第2レンズと第5レンズの厚さを薄くしてしまった。この方が一眼レフに必要なバックフォーカスを稼ぐのに有利なはずだし、その自由度を使って収差補正ができるはずだ、中村さんにはそんな想いがあったろう。そしてその直感は見事に的中したのだ。さらに薄型化することで各レンズの曲率が弱まり、コマフレアも減らすことができたのである。こうして50mm F2レンズより3mm以上全長の短い「パンケーキ」50mm F1.8が出来たのである

 こちらはAi 50mm F1.8なんてなかったかのような書きぶりで、Ai 50mm F2から直接Ai-S 50mm F1.8にモデルチェンジしたかのようだ。

 なぜなのか? なんかやましいことでもあるのか? 黒歴史なのか?


追記 2025/9/13

 曇った貼り合わせレンズは超音波洗浄機に入れてみた。

分かりにくいけど貼り合わせの内側に水滴

 取り出すと貼り合わせの内側に水滴がある・・・と、ということは・・・! やっぱりバルサムがもうだめで貼り合わせ面が浮いているのだろうなぁ。でもおかげで綺麗にはなった。ジャンクだからこそこういう冒険も。

シリカゲルで強制乾燥
綺麗になった

 ついでに絞りクリックも。

 このような板バネの角が、絞りリング内面のガタガタとかみ合って絞りクリック感を出している。なので、この板バネを外して手で曲げてみたら・・・結構いい感じになった。やった。唯一の不満が解消した。

 あと、前回は調整が適当で無限遠が出ていなかった(指標10mくらいで無限遠に合う)ので、やり直し。無限遠が出るようなヘリコイド位置(つまり指標で10mあたり)にしておいて、以下の写真の3つのねじを軽く緩めてから、フォーカスリングを無限遠に合わせる。このときねじを緩めているので、ヘリコイド自体は動かず、フォーカスリングだけが動く(空回りする)。で、3つのねじを締め直す。以上。

コメントは受け付けていません。