GFX50S IIを1年使って

 1年ちょっと使ったので、雑感を書く。

 私にとって機能を語るようなカメラじゃないので、ただ描写についてのみ書きたい。

APO-LANTHAR 90/3.5 SL II

 最初に「おっ!?」と思ったのはこのカット。マジックアワーにこのシルキーなカーテン、そして光線の角度といった要素が強いのであって、はっきり言ってこれはFF判では撮れないか?と言われれば、多分撮れるだろう。でも、写真の「階調」というものを大きく意識した瞬間だった。

 この階調というものを自由自在に操れるようになりたい、と思うようになった。

HD PENTAX-FA 43mm F1.9 Limited

 その階調を表現できるレンズ、できないレンズがあるように感じて、いろいろ手持ちのレンズを試してみた結果、FA43/1.9はぎりぎり合格と判断した。ちょっとばかり寄れないが、GFXではおおむねFF判の35mm F1.4相当くらいの感覚で撮影できる。ただし、F2.8以上に絞ったほうが良い結果が得られる気がする。

 仮説だけど、高い解像力、周辺まで一貫した画質など、割と単純にレンズの光学性能が高いほど良くて、それにあまりシャープネスを掛けないGFXの画像処理と、フジならでは色表現が組み合わされると、デジ臭さが少なく、良い階調や質感が表現できるではないだろうか。

HD PENTAX-FA 43mm F1.9 Limited

 当然だが同じF値なら、ボケ量はGFXはFF判よりも0.7段くらい多い。が、よく分かっていないんだけど、ボケていないエリアにこそ階調が生きてくる、ような気がしている。初期のGFレンズはどれもF値が暗く、それはボケじゃなくて階調を意識して撮れよ、というフジからのメッセージなのではないだろうか。最近のGFX100RFもそう。

 だから、GFXに対してFF判よりも大きなボケばかりを求めている人を見ると、分かってないなぁと思ってしまうが、分かっていないのは私の方である可能性も非常に高い。人は自分が分からないものを馬鹿にしてしまう。

 同じように、GFXやXシリーズを使っているのに汎用ソフトでRAW現像している人も、分かっていないなぁ、と思ってしまうが以下略。

 結局その後、F2やF1.7のGFレンズが投入されたのは、ボケ量を(ボケ量も?)求める人が多く、それに応える形だったのだろうか。まぁ、ボケ量が不要なわけじゃないし、明るいレンズは必要に応じて絞ればいいんだから、その気持ちは分かる。

GF63mm F2.8

 ということで1本目にして唯一のGFレンズのつもりで、F値は暗いけどド標準のド定番、GF63/2.8を購入した。周辺まで妥協のない画質には満足していたが、撮っていて心躍るか、と言われれば全然。何かが物足りない。いや、何かって、間違いなくボケ量だろう。F2くらいだったら、全然印象が違っただろう。

 GFXの階調表現は素晴らしい。だけどFF判にもできるボケの表現が、FFよりもポテンシャルは高いはずのGFXでできないなんて、それは不満だろう。もしかしたら、ボケと階調は1枚の写真では両立しにくいものかもしれないが、絞りを変えることで1本のレンズで両立させることは可能だろう。

GF63mm F2.8

 GF63/2.8は確かに魅力的な絵を出せる。しかし引き出しが少ない。あとAFがおバカで、MFもしづらいのは、Xシリーズの初期のレンズを彷彿とさせる。その代表であるXF35/1.4と画角&ボケ量はほぼ同等だが、XF35/1.4は本当に引き出しが多い。絞り値でキャラが変わるし、寄れるし、小型軽量だし。

HD PENTAX-FA 43mm F1.9 Limited

 結局、GF63/2.8は半年ちょっとで売ってしまった。そして、ある程度性能の良い一眼レフ用のレンズをMFで使うのが良いと思った。

 ただしイメージサークルが足りていたとしても、望遠を除く多くの一眼レフ用レンズでは、絞りを開ければ周辺光量落ちと周辺画質の低下は免れない。ボケと構図である程度カバーはできるので、背景・前景を大きくぼかすという選択肢自体がないGF63/2.8よりは引き出しはある、と言える。

Ultron 40mm F2 SL IIs

 フィルムカメラ用に、と買ったUltron 40/2を試しに付けてみたが、周辺はいまいち。この写真はぼかしているのでそこまで気にならないが、やはりこのレンズはGFXではなく、フィルムカメラに付けるべきだ。

 だが、コゲ茶猫と朝日という非常に明暗差が大きいシーンでもGFXは耐える。そしてそれをただ階調があるだけの眠い絵にしないところが、フジの画作りの真骨頂だと思う。実感としてGFXのフィルムシミュレーションは、Xシリーズのそれよりもさらに良い。X-T5で使えなくなったAstiaが、GFXでは昔と変わらず、私の大好きなAstiaでいてくれるのが嬉しい。

smc PENTAX-FA 77mm F1.8 Limited

 GFXを使うことで、FA77/1.8の良さも再認識した。このレンズはとろけるボケと、締まらない暗部がGFXの階調と相まって相乗効果を生み出す。気がする。

 こうやって壁に正対して撮ると、被写界深度は薄いが壁一面にピントが合っており、壁の陰影で繊細な階調を見せつつ、壁以外の部分がボケることで立体感も見せる。階調とボケの両立解の一つだとは思うし、たまにはいいが、こんなのばかりを撮っていてもつまらないだろう。

NOKTON 50mm F1 VM

 NOKTON 50/1はFF判ぎりぎりのイメージサークルしかないので、FFクロップするしかないのだが、それでも3000万画素あるので、基本的には問題ない。が、GFXの魅力はこれではないよなぁ、と感じてしまうのは何なんだろう? ボケ量的には中判っぽさはある。色味はフジらしく、良い。

 しかし違和感を拭い去れない。結局GFXではMマウントレンズはほとんど使っていない。

NOKTON 50mm F1 VM

 ほぼ1年経った頃のFFクロップでのセルフオマージュ・・・というか焼き直し。まぁ、1年前の写真の方が数段良いよね。

DC-Nikkor 135mm F2D

 ↑の写真ではよく分からないけど、四隅は蹴られている。このレンズも何回かGFXに付けて持ち出したが、今後はないかも。αで使うのがいい。

DC-Nikkor 135mm F2D

 スクエアにするのはあり。スクエアとか5:4とか、やたら横長のフォーマットとか、そういうアスペクト比で遊ぶのもいつかやろう。3:2は135判(FF判)でド定番だけど、印刷すると細長いなぁと思う。GFXの4:3は645判など中判の定番だけど、スマホ写真と同じアスペクト比なので特別感がない。そこでシノゴやスクエアはどんな印象を持つだろう?という。え、スクエアと言えばチェキ?

CONTAX Makro-Planar T* 60mm F2.8 C

 結局APO-LANTHAR 90/3.5とFA77/1.8は開放から使えるし周辺画質もまぁいける、FA43/1.9は1段絞れば一応OKと判断したが、標準レンズがない、という問題は解決しなかった。

 父のMakro-Planar 60/2.8 Cを一時期借りて使ってみたが、わずかにオーバーコレクションなのと、コントラストが高いのが気になる。あと3:2(FF判ではない)になるように上下をクロップしても遠景は周辺光量がかなり落ちる。あんまりGFXと相性が良くないと思った。やはりFF判で使うべきレンズだ。

 なんだろう? 私の中でGFXは、周辺光量落ちと相性が悪いのかなぁ?

CONTAX Makro-Planar T* 60mm F2.8 C

 近距離なら四隅も蹴られないし、ハーフマクロだからかなり寄れるのはいいんだけどね。

 比べるものではないけれど、焦点距離とF値が近いという意味では、GF63/2.8のほうがいいと思う。

GF55mm F1.7

 ということで、満を持してGF55/1.7へとたどり着いてしまった。このレンズを買ったのは、GFXの底力を限界まで引き出せる純正レンズを1本は持っておかないと、GFXのことを本当に分かることはできない、と思ったからだ。分かりたいのだ。

GF55mm F1.7

 やはりGFレンズは隙がない。FF判でいうF1.4相当なので、これだけボケれば不満はない。描写には文句の付け所がないが、サイズ、重量、値段はクソ。そこはある程度描写とのトレードオフだから、仕方ないんだけど。

 だけど例えば約1/3の値段で手に入り、描写もかなり良く、サイズ・重量は同レベル、口径食も良好、AFはGFレンズを遥か上回るPlanar T* FE50mm F.4 ZAと比べたら、このレンズは本当に優位性があるのか?というのはまだ結論は出ていない。

GF55mm F1.7

 αをメインで使っているが、α7CRと比べてGFX50S IIは明確に上か?と問われれば、これも明確ではない。まぁ、実は値段もその両者で1割も違わない。なお、この1年の撮影枚数で言えばα:GFX=5:2くらい。

 だからと言って、2台持ち出して直接撮り比べるのもなんか、そうじゃないんだよなぁ。使いたいシーンが違うから。

GF55mm F1.7

 GFXは描写・表現力において限界が高いのか、それとも平均値が高いのか、両方なのか。本当にそこに有意差があるのか? いつも疑問を持ちつつも、やはりいいなと思うことがあるから、こうやって1年以上コンスタントに使い続けている。

smc PENTAX-FA 77mm F1.8 Limited(トリミング)

 GF55/1.7ではさすがに望遠側が足りないので、FA77/1.8かAPO-LANTHAR 90/3.5は今後も使うだろう。

smc PENTAX-FA 77mm F1.8 Limited(トリミングなし)

 トリミング前はこんな感じ。イメージサークル自体はGFX判をカバーしているといっても、やっぱりFF判より外は結構怪しいと言わざるを得ない。APO-LANTHARのほうがいいかなぁ。

GF55mm F1.7

 旅行など、初めて行くところにGFXを持ち出すには、レンズがこれしかないので不安がある。もし広角や望遠レンズを持っていたとしても、あまりにでかくて行動に支障きたすレベルなので、私にとってはやはり旅行向きではない。旅行ならαがいい。

 日々の散歩に持ち出すには・・・やっぱりでかすぎる。αかX100Vのほうが絶対いい。たまに気分転換で持ち出す程度だろう。

 ということでGFXの出番は、初めてではない旅行先で、45mm相当の画角だけで行ける、という確信がある場合。例えば金沢の街はちょっと好きで、これまで3回行き、1回目は50mmと25mmを持って行き、2,3回目は50mmだけだった。

 もう一つの出番は、撮影が主目的の外出時。年数回、関西に帰って、カメラ仲間と撮りに行くが、このときならGFX50S IIとα7CRみたいな2台体制もありだろう。春は吉野山に登って花見をしないといけないので、ちょっと厳しいか。

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