NOKTON classic 35/1.4雑感(再)

 前回書いてから、約3年使い込んだので、評価を再度改訂したい。

レンズ:Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 II MC VM
評価:87 → 91 → 97点

 いつも書いているが、レビューというかは私個人の感想である。

 以前は独特のボケ質にばかり目が行っていたが、ようやく私にもこのレンズの真価が見えてきた気がする。

 このレンズを所有して以降、35mmをよく使うようになった。私の中の35mmスイッチが入った。この3年間で6本の35mm相当単焦点(現存するのは2本)とX100Vを使った。

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 そして、そのたびにこのNOKTON classic 35/1.4の魅力を再発見していった。NOKTON 23mm F1.2 X-mountは、開放でも絞っても中央と周辺で画質の差が大きすぎて、その一貫性のなさはどうしても好きになれなかった。このレンズは開放でも周辺は悪くないし、絞ると中央の解像感が上がる以上に周辺の解像感が上がり、一貫性が増す。まぁ、普通のことなんだけど。

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 Super-Takumar 55/1.8でも虹色フレアは出せる。だが、あちらは強い光源を画面内に入れたときにフレアが出るのに対して、こちらはもっと斜め方向から強い光が入ったときに出る。結構違う。

 またSuper-Takumarの虹色フレアは、もれなくコントラストが大きく低下するが、このレンズはそうではない。フレアが出る角度を探すのは割と大変だが、印象的なアクセントを加えられる。

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 何より好ましいのは、この繊細な描写と滲みである。6群8枚の対称型ダブルガウスというレンズ構成から、8枚玉Summicron-M 35/2のオマージュかと思いきや、実際にはスチールリムSummilux-M 35/1.4のオマージュなのかもしれない。この滲みは癖になる。

 昨今はLight Lens Labに限らず、いろんな中華メーカーからライカコピーレンズが出てきているが、このレンズはそれらとは一線を画す。ただのパクリなどプライドが許さないのか知らないが、あれとそれを足して2で割って+αした感じ。

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 数少ない弱点の一つは、樽型の歪曲である。近距離でも遠距離でも同じように歪む。この写真は補正している。まぁ、必要に応じて補正できるので、致命的な弱点にはならない。

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 当たり前だが絞ると滲みは消える。F2くらいでもかなりシャープになる。なお周辺光量から察するに、↑の写真はもっと絞っているだろうけど。

 VoigtlanderにはULTRON 35/2やCOLOR-SKOPAR 35/2.5, 35/3.5もあり、それらもいいレンズなんだと思うが、35/1.4でこのコンパクトさ、かつF2まで絞ればシャープになるんだから、これ1択だろう、と思っている。

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 言うまでもなく、後ボケはとても特徴的だ。はっきり言って、適当に撮ると背景がざわつく。いわゆるバブルボケともちょっと違う気もするが、オールドレンズにありがちな後ボケのエッジが濃くなる傾向である。

 が、これがボケ量によってとても気持ちの良いスイートスポットがあるのだ。

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 私にとってのスイートスポットはこの辺である。とっても好み。

 もう一つの弱点は色収差だが、それほど出まくるわけではない。私が使ったNOKTON銘のレンズのうちでは一番マシ。しかも、これも後処理で簡単に消せるので致命的ではない。

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 華やかな滲みが桜にもぴったりだ。もはや滲みというか前ボケというべきかもしれない。例外はあると思うけど、一般に後ボケがざわつくということは、前ボケは柔らかいということだ。

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 αで使う分には、ヘリコイド付きアダプターでかなり近距離まで寄れるので文句はない。M型ライカで使う場合は0.7mで、ちょっと寄り切れない。まぁ本家のスチールリムは1mなので、それよりは寄れる。

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 同じVMでNOKTON 35/1.2 IIIも持っており、あのレンズもかなりいいと思っている。特性的にはNOKTON classicと対照的で、あちらは滲まないし歪まないしボケもとにかく端正。だからこそNOKTON classic 35/1.4を使うとNOKTON 35/1.2を使いたくなるし、その逆もまたしかり。私の中の無限ループが始まる。昨年は奇しくも両者、1枚単位で同じ枚数撮っていた。

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 35mm(相当)で言えば、X100VやSIGMA 35/2 DG DNも使っており、それらは便利だけど、描写だけでいえばその2つは手放しても構わない。NOKTON 35/1.2とNOKTON classic 35/1.4があればいい。

 でもまぁ、テーブルフォトだとX100Vがいいし、雨の日スナップならSIGMA 35/2がいい。

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 撮っているときの楽しさと、帰って家でモニターで見たときの出来が一致しないレンズも多いと思っている。癖玉になればなるほど、その傾向が強いと思う。だが、その点もこのレンズは私の期待を裏切らない。信頼している。

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 ここまではαで撮影、ここからはM型ライカで撮影。

  1. α + NOKTON classic 35/1.4 E-mount
  2. α + NOKTON classic 35/1.4 II MC VM
  3. M型ライカ + NOKTON classic 35/1.4 II MC VM

 という様々な組み合わせで使ってきた。コシナは同じ名前のレンズでも、マウントごとにセンサーのカバーガラスの厚さに合わせて光学系を微調整しているという。なので1.と3.は良いが、2.はイマイチなのか?と言われれば、このレンズに関してはあまり違いを感じない。

 Mマウント版APO-LANTHARをαボディで使ったりするとなかなか酷いようだ。

Leica M11

 世の中に滲むレンズはほかにもたくさんある。でもレンズによっては、滲んでいるというより、単に解像していないだけじゃないの?という描写のものも多い。NOKTON classic 40/1.4はそういう描写だと思った。それに対して、このレンズは明確な芯がありつつ、そこから滲みだすような描写であり、平たく言えばライカっぽい。

 また、芯がありつつ滲むレンズでも、解像のピークとコントラストのピークがずれているレンズは結構使いにくくて、ストレスを感じることがある。NOKTON 23/1.2 X-mountやULTRON 75/1.9 VMはそういう傾向を感じた。それに対して、このレンズはそうではなく、両者はしっかり一致している。使いやすい。

Leica M11

 この階調が好きだ。とは思うものの、今どき階調性の悪いレンズなんてあるのか?と思うし、ボディ側(センサー)のほうが階調への影響はずっと大きいと思う。

Leica M11

 M型ライカを買ったときは漠然と、このレンズは引き続きEVFを備えたαボディで使うのかもなぁ、と思っていたが、実際にはライカに付けて使っている。滲みや後ボケや絞りによる収差の変動をリアルタイムに見るという意味では、確かにEVFにメリットはあるのだが、その辺はもうだいたい頭に入っている。距離計で合わせて撮って、背面液晶で確認して・・・の手順で十分狙い通りに撮れていると思う。

 ピント面の少し手前が綺麗に滲むので、滲ませたい箇所にピントを合わせたのち、少しピントを奥に送ってやることで滲みを誘発できる。

Leica M11

 ただし虹色フレアは別。これはライブビューで見ながらじゃないと無理。

Leica M11

 周辺光量落ちは大きめだと思うけど、それはVoigtlanderはだいたいそう。フォーカスリングのしっとりした操作性も素晴らしいが、それもVoigtlanderはだいたいそう。バヨネットフードもかっちりしていて、フィルターがフードの内側に共存できるのも良い。

 操作性については、フォーカシングノブの形状が微妙にいまいちだ。2m以内にピントを合わせようとすると、脇を開いて変な態勢で無理やりノブに指を掛けるか、つるつる滑るフォーカスリングをつかんで回すかしかない。ノブがあるのはいいんだけど、ローレットも切っておいてほしかった。絞りリングの操作性は良い。

 このレンズを一言でいえば、引き出しが多く、写りも個性的でとても楽しいレンズ、である。

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