SIGMAのDPシリーズは長らく使っていたが、SIGMAの交換レンズを買うのは初めてである。
きっかけはRX1R IIIの発表を見て、中古のα7CRとSIGMA 35mm F2なら(ひと回り大きいけど)RX1R IIIよりも30万も安く上がるし、α7CRをすでに持っている私にとってはなおさらだということに気づいてしまった。
ひと回りの大きさ&重さは、手振れ補正と可動液晶と電池の持ちと、何よりもレンズ交換可能ということで、余裕でペイするだろう。実質6万弱でRX1R IIIが手に入るといっていい。・・・いや、本気にされても困るけど。
でも66万もするのなら、センサーとレンズをセットで最適化しつくしたその描写を、口先だけじゃなくて、我々に見せつけてほしい。α7CR + SIMGA 35/2とは次元が違う、と感じさせてほしい。唸らせてほしい。
今年に入ってから中広角レンズは4本手放し、1本も買っていないので、1本くらい増えてもいいかな、と自分に言い訳。中広角じゃないけど最近1本売ったので、持ち出しは1万以下だし。もうすぐ私の誕生日だし。・・・下半期は質素に生きていく宣言はなんだったのか。
35mm域はX100VとNOKTON 35/1.2 IIIとNOKTON classic 35/1.4 IIがあるので、それらと役割が被っても意味がない。具体的にはリアルタイムトラッキングできる高速&高精度AFであることは第一条件だ。また中広角は多少の周辺光量落ちはいいんだけど、周辺部で点が点に写らない(非点収差やコマ収差が大きい)のはかなり気になる、という実体験があるので、そこは譲れない。
以前αシステムへの移行を検討したときに、もしAFの35mmを買うならSIGMAの35/2 DG DNかな、と結論付けていたが、今もう一度検討してもやはり同じ結論に至った。特に質感と値段がいい。サイズ感もまずまずだが、全長があと1~2cm短ければ言うことがなかった。
後ボケはちょっと硬めでSonnar T* FE55/1.8 ZAに通じる雰囲気がある。大き目にぼかすと得も言われぬコクが出る。あと、開放ではピント面は微妙に柔らかく、Sonyユーザーに多いシャープネス至上主義の人は多分、これに耐えられないのだろう。そういう人はGMを使うと良い。
私はこういう特性のレンズは好きなのだが、人を選ぶだろう。このレンズの評価が二分しているのはこのあたりだと思う。
Sonnar 55/1.8 ZAよりも、もっと似ている何かを知っているような気がしていたが、思い出した。そう、ライカである。ライカに詳しくないので、ライカのどのレンズとまでは言えないが、私の持っているSummicron-R 50/2とも似ているし、友人の使っているSummilux-M 35/1.4 ASPHとも似ているような気がする。ボケ質や解像というよりも、重めの色味やコントラストがなんかそれっぽい気がするのだ。
まぁ、同じ35mmでもライカMレンズはここまで寄れないので、直接比較はできないし、する気もない。
どちらかというとSonnar T* 35/2を有するRX1R IIIとの比較は気になるところだ。一応Zeiss銘とライカ風?、という点で。Eマウントの35mm F2としてはこのSIGMAが代表格だと思うし、そのうち誰かが比較してくれることだろう。なお、海外サイトでよく見るチャートでの数値比較は全く興味はない。陰影のある立体物を撮った実写で比較してほしい。
SIGMAを語るとき、頻繁にビルドクオリティという言葉を見るが、なるほどこれは確かに良いと思う。Iシリーズは店頭では何度も触ったことはあったが、本気で買おうと思っておらず、絞りリングとかフォーカスリングとかは触ったことはなかった気がする。
防塵防滴レンズで、この絞りの操作フィーリングはなかなかない気がする。フォーカスリングもしっとり滑らか。
F2からちょっと絞ったところの特性をもっと見極めないと。まだ全然特性を把握しきれていない。まぁ、これを少しずつ手のうちにしていくプロセスが新機材を使う醍醐味である。じっくり楽しもう。
F2.8あたりもかなりおいしいことが分かる。ボケの硬さは解消し、絞り形状も丸くて良い。ちゃんと試していないけど、口径食が嫌ならF4くらいまで絞らないとダメかな。
今回のベストショットかな。焦点距離35mmかつ高速AFで、周辺まで一貫した画質を持ち、素晴らしいスナップ用レンズだ。
買う前から分かっていたことだが、最短撮影距離0.27mは微妙に遠い。35mmレンズだから相場は0.35mだ、と考えればまぁ頑張っているので、文句は言いづらいが。競合のSony FE35/1.8は0.22mで、そこまで寄れたら文句はないのだが。
NOKTON 35/1.2 | NOKTON 35/1.4 | SIGMA 35/2 | X100V | |
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ボディ~レンズ先端 | ▼約61mm | ▽約39mm | ▼65.4mm | ○約20mm |
FF換算ボケ量 | ○F1.2 | ○F1.4 | ▽F2 | ▼F3相当 |
後ボケの質 | ○柔らかい | ▼硬い | ▽やや硬い | ○柔らかい |
軸上色収差 | ▼かなり出る | ▽やや出る | ○あまり出ない | ○ほぼ出ない |
歪曲収差 | ○ほぼない | ▼やや樽型 | ○ほぼない(補正) | ○ほぼない |
開放での口径食 | ▼かなり大きい | ▽少し大きめ | ▽少し大きめ | ○小さめ |
AF | ▼なし | ▼なし | ○速い | ▽遅い |
開放での解像力 | ○高い | ▼低め、滲む | ▽やや低め | ○高い |
最短撮影距離 | ▼0.5m | ▼0.7m | ▽0.27m | ○0.1m |
なお表の▼、▽、○は一概に良い悪いではなく、傾向を示すために書いている。例えばNOKTON classic 35/1.4の後ボケの硬さや開放での滲みは完全に狙って作られた特性であり、あれだからこそあのレンズは最高なのである。
どうでもいいが2020年の発売当時、45mmが既にあったところに24, 35, 65mmが追加され、それらをIシリーズと呼称するようになった。私の中ではもう間違いなく、24 & 45mmまたは35 & 65mmというコンビで使ってくれ、というSIGMAのメッセージだと思っている。いいね。
私はFA77/1.8 Limitedと組み合わせて使用するのだが。