この記事から2年弱、紆余曲折を経てとうとう買ってしまった。結構な良品が安く手に入ったもので。
防塵防滴の標準レンズが欲しいと考えたときに、作例を見ていたらやはりこのレンズがすごくいいように感じた。PlanarではなくSonnarというのもそそるポイントである。もちろんPlanarも好きで、Planarはこれまで5本使ったことがあり、Sonnarは4本目である。
これでやっと、雨の日の散歩に標準レンズを持ち出せるようになった。
絞りリングがないため、電源を入れないとF値が分からず、後ろダイヤルで操作するのがだるい。単に癖なだけだが、私は絞りと露出補正値と、ズームレンズの場合は焦点距離も決めてから電源を入れて、ファインダーを覗いて、フォーカスエリアを選び、フォーカスと構図を合わせる、という流れなので、それができないのはちょっとストレス。
イマイチなところ
- 絞りリングがない(資産たりえない)
- 全長が結構あって(70mm)、α7Cにはバランスがイマイチ
- 最短撮影距離50cmと、ちょっと遠い
- AFは今どき特に速くはない
- 暗いところではAFを外しがち(レンズとボディ、どちらの所為なのかは知らぬ)
- 絞りが動作する音はうるさい(あのXF35/1.4よりもうるさい)
- 口径食は普通にはある
- そんなに気にしないけど、コマ収差は結構あるように見える
- 私は気にしないけど、点光源は玉ねぎボケ
- 私は気にしないけど、フォーカスブリージングは大きい
- SONYって書いてある(難癖)
良いところ
- ボケがこってり系(距離によっては、うるさいボケとも言う)
- ちょっと絞れば解像は十分(2400万画素にて)
- 軽い(でもレンズ枚数やF値の割には重い)
- 2段くらいまでは絞り形状がほぼ円形
- 無音でスムーズなAF
- 意外なことにMFのフィーリングは良好
- 防塵防滴
- フリンジは割と出にくい
- フードの作りはいい(フジ比)
- インナーフォーカス
フリンジは出ないわけじゃないけど、それほど悪くない。ちょっと絞れば抑え込める。
Cマウントの西独Zeiss、M42の東独Zeiss、ヤシカコンタックス、コンタックスG、FマウントのコシナZeissのレンズを使ってきたが、とうとうここにEマウントのSony Zeissも仲間入り。しかし、これももう11年も前のレンズなんだな。
ということで、これまで3本買って3本とも手放したEマウントレンズを、性懲りもなくまた買った。だがαを所有する限り、このレンズは手元に置いておこうと思っている。・・・思っているが、時として気は変わるものだ。
10年前ならともかく、今とりあえずαで常用できる標準レンズが欲しいだけの人にはお勧めできない。今どきの端正な柔らかいボケでないと嫌という人や、解像度偏重の人、基本F4とか5.6とか絞って使う人にもお勧めできない。シグマとか、ほかにもっと適したレンズがある。
(私にとって)このレンズの真価は、ボケ味である。
このボケを単に「硬い」、「うるさい」と言って敬遠するのはもったいない。それなりにざわざわした背景を大きめにぼかすと、こってりとしたとても魅力的なボケ味が出せる・・・ことがある。スイートスポットは狭め。
私の大好きなFA77/1.8 Limitedはもっとスイートスポットが広いと思うが、あれは特異点なので無視してよい。
なだらかな微ボケも綺麗。大きいボケも綺麗。中途半端なボケがざわつくので、そういう意味で、主題と背景を明確に分けるポートレートには向いているのだろう。
が、バストアップで背景をいい具合にぼかすにはちょっと焦点距離が短い or F値が暗い気もする。50mm F1.4や、85mm F1.8あたりのほうが良さそう。
最近のレンズは収差を抑えきっているからか、どれも同じようなすっきりボケでつまらない、でもオールドレンズみたいな二線ボケは嫌、っていう人(=私)にこそお勧めする。
ということで、一通りいじめて得手不得手は把握できたつもりなので、ここから使い倒していこうと思う。
主題と背景とその位置関係を意識して撮ることを思い出させてくれるレンズだ。漫然と撮っていると、漫然と写る。結構尖った上級者向けレンズであるように思う。私はこのレンズをまだ使いこなせてはいないが、その片鱗はちらほら見えてきた感じ。
初めての単焦点として手を出しやすい標準レンズで、大きなボケが初めての人々が褒めちぎっているのかと思っていたが、全然違うではないか。まぁ、そういう側面もあるにはあるだろうけど。
ボケ質は全然違うが、その「狭いスイートスポットにはまったら、描写において現代レンズを凌駕する」という意味で、ヤシコンやコシナのPlanar 50/1.4に似たものを感じる。
ちなみに、いにしえのSonnar 50/1.5とは全然キャラが違う。あっちはぼかしきっても絞り込んでも、なかなか収差を隠したり、何かに昇華できないじゃじゃ馬である。あれはある種の開き直りが必要なレンズだと思う。
よく年輪ボケ、玉ねぎボケと言われるが、それはそう。イルミネーションを撮るのには向かない。ちなみにこれはピントが抜けてどこにも合焦しなかった。ちょっと萎える。
口径食はほどほど。レモン型で済んでいるし、目くじらを立てるほどじゃないが、イルミ以下略。
なお口径食は、F2.8まで絞っても解決しない。なおAFがダメだったのでMFで撮ったが、このMFが結構良いフィーリングなのだ。びっくり。