Summicron-R 1:2/50雑感

 もはや何本持っているのか分からない標準レンズの中でも、私の中でTop5には入るであろう、1966年製の超性能オールドレンズ。

  • レンズ:LEICA Summicron-R 1:2/50 (Type I)
  • 評価:89点

 8年位前に、ちょっとここらでライカレンズでも使ってみるかと軽い気持ちで、安くて実用性がありそうなRマウントのSummicron 50mmを買った。現行の新品Summicron-M 50mmと比べるのも何だが、その1/10くらいで手に入ったのは、今思っても安い。

 買った当時でもほぼ半世紀前のオールドレンズなので、さぞかしクセ玉だろうと思っていたが、全然そんなことはなかった。拍子抜けした。それくらいこのレンズの特性などを何も調べずに、付くかどうかだけ調べて買ったのだった。

 そして使い込むほどに、その驚くべき性能が見えてきた。

 まず、ボケが綺麗である。解像度重視で球面収差を無理やり補正したオールドレンズにありがちな、ざわつくボケ感はない。だが無味無臭のボケと言うわけでもなく、ごくわずかにあるボケの縁取りが、ボケのコクを生んでいる気もする。

 では解像度が低いのかというと、それどころか逆にあきれるほどに解像する。2400万画素くらいのカメラなら一切問題なく、それ以上のカメラでは試していないので分からない。

 多少樽型にひずむが、歪曲くらいならあとで補正できる(↓補正済み例)ので問題ない。

 同じダブルガウスだが、Planarとは明らかに異なる設計思想が見て取れる。というか、たかが4群6枚のダブルガウスで、ここまで球面収差を取りきれるものなのか。

 ボケ質と解像度を両立し、歪曲は後処理でなんとかする・・・まさに現代レンズの設計思想そのものではないか。

 コントラストはちょっと高すぎて使いにくいかもしれない。コントラストの高いものを撮ると、せっかくの解像感が薄れ、線が太く見える。炎天下には向かない。

 口径食は普通にある。色収差は結構少ない。絞りはカクカクの6枚絞りなので、玉ボケを出したいときは絞れない。周辺減光の具合はなかなか好みである。

 しかし最近買ったAPO-LANTHAR 50mm F2は、ほぼすべての要素においてこのレンズの上位互換なので、今後このレンズの出番が減るかもしれない。

 フィルター径がφ43.5mmとかいう意味不明なのは減点ポイント。かっこ悪いけど52mmへのステップアップリングを付けている。保護フィルターは付けていないが、↓のようにNDやPLを付けるときのために。

 フォーカスリングはちょっと重すぎる。調子の悪いレンズや、どうでもいいレンズだったら、分解してグリスを塗りなおすのだが、ここまで調子のいいレンズだと、分解する勇気が出ない。

 最近はLM-EA9をかませて、AFで使ったりもしている。AFだと重いヘリコイドを回さないでいいというのもメリット。

 LM-EA9により、最短撮影距離は35cm程度まで縮まる。ここまで寄れれば不満はない。今後は、APO-LANTHARを持ち出すほどの気合がないときに、AFレンズとしての出番がメインになるかもしれない。

 私は(特にミラーレスでは)MFを苦にはしていないが、AFはあるに越したことはないと思っている。ただ、AFでフォーカスを外したとき、レンズやボディの所為にする人にだけはなりたくない。