私の中ではXF35mm F1.4の相棒として、最大限に近い信頼を寄せている中望遠レンズである。
- レンズ:FUJINON XF56mm F1.2 R APD
- 評価:92点
私の持っているレンズの中では、もっとも高かったレンズである。といっても10万円台前半なので、今どき基準では高いレンズではないのかもしれない。さらに1万円くらいキャッシュバックがあった気もする。
買ったのは2015年の夏、X-E1を買って2年後くらいだったが、X-E1ではAFの動作が厳しく、SSも1/4000sまでしか切れないためNDフィルターを手放せず、NDを付けるとさらにAF精度が下がり、結構使いにくかった。
APDレンズをAFで使えるだけありがたい、というレベルだった。
そのさらに2年後くらいにX-T2を買ってから、AFの動作も許容範囲になり、電子シャッターで1/32000sまで切れるようになり、本領を発揮し始めた。
ここまでX-E1の写真。ここからX-T2の写真。
中望遠大好きの私だが、それほど中望遠レンズは持っていない。それはFA77/1.8 Limitedが素晴らしすぎて、それと被るレンズを買っても使わないからなぁ、という思いがあるからだ。
これを買った当時は、中望遠単焦点はFA77/1.8 LimitedとFA135/2.8を所有するのみだった。その後、このレンズとSonnar T* 90/2.8 (CONTAX G)が増えた。今となっては4本とも素晴らしくて、満足している。
そんなわけでこのレンズも悩んだが、APDに大いに惹かれて買った。だって要は、ずっと憧れていたあのミノルタのSTF(と同種の技術)なわけだ。しかもAF。
さらにミノルタのSTFは135mm F2.8だったと思うけど、これはそれよりはるかに使いやすい56mm F1.2(35mm換算で約85mm F1.8相当)。でもミノルタの方がAPDががっつり効いているらしい。
しかし開放F値は1.2だが、明るさとしてのT値は1.7だし、アポダイゼーションフィルターのためにボケの大きさ自体もF1.2級はない。じゃあF値って何だろう?と考えさせられる。もちろん光学有効径と焦点距離の比なんだけど、APDの場合は露出にもボケ量にも直結しない謎指標になっている。
それはさておき、このレンズの本領は絞り開放。開放なら、どんな条件だろうが絶対にボケがザワつかないことが保証されるレンズである。
もちろん、絞ってぼかさずに撮ってもいい。解像度も文句はない。
FA77 Limitedとは描写が全然違い、気分によって使い分けている。XF14/2.8 + XF35/1.4 + XF56/1.2APDという3本体制で持ち出すことが多い。
APDではないXF56mm F1.2 Rともよく比較されるし、そちらの方が好みだという人が多いことも知っている。値段差もかなりある。
昨年、XF56mm F1.2 R WRというすごいレンズが出たことも知っている。旧型よりも解像度は明らかに高いように見える。寄れるのもいい。あと、SIGMAの56mm F1.4もかなり評判が高い。
しかし私が欲しかったのはSTFレンズであって、単なる高性能レンズや中望遠レンズではないのである。あと、でかいレンズは嫌いで、旧型のサイズで許容限界ぎりぎりだ。
理想的なボケというのは、ともすれば不自然なボケ、ということになる。点光源のボケを見ると、そう言いたくなる気持ちも分からないでもない。身近にも、アニメチックなボケだと言って、このレンズをあまり好きでない人もいる。
なお、APDやSTFと言ったら何となくマニアックで、使いこなしの難しいレンズのように感じるかもしれないが、このレンズは違う。ボケ味で失敗することがないので、普通のレンズよりも撮影が簡単だとさえ言える。
ここには載せないプライベートな写真だが、最高の一枚を撮れた、というだけでも買ってよかったレンズである。
最高の一枚かどうかはさておき、この写真が撮れたことも良かった。